Production Note プロダクションノート

アイ・ウェイウェイ 2012年1月 インタビュー

Q: この映画を観た人々に、何を望みますか?

アイ・ウェイウェイ:(この映画を観ることによって)観客はまず、僕がどういう人間で、アーティストとしてどんな問題意識を持っているかを知ってくれるだろう。僕は観客たちが表現の自由の大切さを実感すべきだと思うし、その権利を大切にすべきだと思う。世界中の多くの地域では、自由を要求するだけで、自由を完全に失う可能性がある。正々堂々と意見を述べる機会すら持てないんだ。

多くの先進社会では、表現の自由は当然の権利だと考えられている。でも、人々がこの権利を得るために尽力している人々がいることを知らないのは罪深いことだ。全ての価値観は人類共通の財産。無知を装うのも、自分には無関係と言うことも、してはならない。そんな振舞いは自己中心的で短絡的だ。

僕が有名なのは、ただ単に、論じるべきことがあり、インターネットをある程度うまく利用しているからだ。僕はインターネットとメディアを通じてメッセージを発信し、より自由にコミュニケーションすることができる。伝えるべきメッセージと、その伝達方法を持っていること――これがとても大事なんだ。いまの時代、僕らは全く違った世界に生き、幾つもの新しい可能性を持ち、万人のために世界をより良くすることができる。この映画を観た人々が、そのことに気付けることを願っているよ。

Q: ご自身がサンダンスでワールドプレミアされた映画の主題になったのは、どのような気持ちでしたか?そして、映画祭に参加できなかったことについてどう思いましたか?

アイ・ウェイウェイ:この映画は表現の自由について描いている。僕が映画祭に参加できなかった事実は、この映画の必要性を強く論じる結果をもたらした。なぜこの手のドキュメンタリーが重要なのか、なぜ発言権が守られなければならないのか、私や監督のアリソンやのようなドキュメンタリー映画作家たちが表現の自由や基本的人権を守るために尽力していることがなぜとても大切なのか・・・という激しい議論をね。

Q: このドキュメンタリー映画は中国をどのように見せていると思いますか?

アイ・ウェイウェイ:この作品は真実を語っている。何十年もずっとこの国に存在している真実をね。中国は発展途上にあるが、司法制度や言論の自由といった一部の分野は殆ど進歩していない。まだまだ非常に強い統制下にある。でも僕は中国が変化しないわけがないと思っている。時間は要するが、変化を求めるプレッシャーと主張さえあればね。プレッシャーがなければ人類は自主的には変わらないっていうのは、誰でも知っていることだろう。

映画に登場する著名な中国人アーティスト/文化人

チェン・ダンチ(陳丹青):

チェン・ダンチ(陳丹青)

陳丹青はニューヨークで1980年代に知り合って以来のアイ・ウェイウェイの友人。アイ・ウェイウェイ同様、著名なアーティストであり知識人。

 

グー・チャンウェイ(顧長衛):

グー・チャンウェイ(顧長衛)

映画作家/撮影監督。
1982年北京電影学院卒業。
同級生の陳凱歌(チェン・カイコー)や張芸謀(チャン・イー儚)と共に『紅いコーリャン』(1989)や『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993)等の映画を制作し、アカデミー賞最優秀撮影賞にノミネートされた。
ロバート・アルトマンやジョアン・チェンといったアメリカの映画監督とも仕事を共にした。2005年の『孔雀 我が家の風景』で映画監督デビューし、2005年ベルリン国際映画祭で審査員特別賞・銀熊賞を受賞。

シェ・ダアチン(謝徳慶):

シェ・ダアチン(謝徳慶)

パフォーマンス・アーティスト。
1950年、台湾生まれ。
謝は1974年に渡米し、1988年に恩赦を受けるまで14年間、不法移民としてニューヨークで暮らした。
この間に、彼は幾つかの注目に値するパフォーマンス「One Year Performances」を実施など活躍中。

ロンロン(榮榮):

ロンロン(榮榮)

写真家。
1968年、中国南部の福建省生まれ。
1993年に北京の「北京東村」に移り住み、アイ・ウェイウェイの影響を受け、同地に住む若い前衛芸術家たちの生活を長期間にわたり写真におさめる。
1996年、彼は「New Photo」誌を創刊し、2000年には妻で日本人アーティストの映里と共に協働。2006年、ふたりはアイ・ウェイウェイの住む北京の草場地芸術区に「三影堂撮影芸術中心」を設立。これは現代写真と映像に特化した中国初の施設で、アイ・ウェイウェイのデザインによる目を見張るような構造物に収容されている。

ズオシャオ・ズージョウ(左小祖咒):

ズオシャオ・ズージョウ(左小祖咒)

左小(本名:吴红巾/ウー・ホンジン)は北京を拠点とするロック・ミュージシャン/詩人/現代美術アーティスト。90年代初め、彼はアイ・ウェイウェイに触発され、北京の実験芸術家コミュニティ「北京東村」の創立メンバーとなった。彼は『老妈蹄花』をはじめとするアイ・ウェイウェイのアングラドキュメンタリーの多くの音楽作曲を手がけている。

ファン・ボーイー(冯博一):

ファン・ボーイー(冯博一)

1960年、北京生まれ。
インディペンデントのキュレーター/評論家。
彼が手がけた主要な展覧会は、第一回広州トリエンナーレと、アイ・ウェイウェイと共同キュレーションした「何者にも与しない Fuck Off」展。
又、アイ・ウェイウェイと共同編集で影響力の高い三部作のアングラ本『黒皮書』『白皮書』『灰皮書』を出版。

ハァ・ユンチャン(何雲昌):

ハァ・ユンチャン(何雲昌)

パフォーマンス・アーティスト。
1967年、中国の昆明市生まれ。
主要な作品は、一列に並んだ100人の人々とレスリングし、82敗18勝した「Wrestling: One and One Hundred」(2001)など。
2006年9月23日、彼は英国の町ボールマーで石を拾い、反時計方向に同国を歩いて回り、6ヶ月以上かけて前述の石を拾い、医師にぴったり場所に戻すというパフォーマンス 「The Rock Touring Around Great Britain」を実施した。

ホン・ホワン(洪晃):

ホン・ホワン(洪晃)

ホンはCNNの記事で“中国版オプラ・ウィンフリー(米国の司会者)/アナ・ウィンター(Vogue 編集長)”と評されている。彼女は中国において影響力の高い文化人で、China Interactive Media(ファッション雑誌iLookの出版社)を経営し、中国人デザイナーに特化したショップのオーナーで、彼女のユーモアと知性溢れるブログ/ミニブログのフォロワーは250万人に及ぶ。

シャン・ホントウ(謝徳慶):

シャン・ホントウ(謝徳慶)

謝はニューヨークを拠点とする中国人アーティスト。
1943年、甘粛省の伝統的なイスラム教徒の家族に生まれる。1982年に渡米。1987年、アイ・ウェイウェイらと共に「Chinese United Overseas Artists Association」に参画。絵画、彫刻、コラージュ、デジタル画像など多様なメディアを使った作品を制作。彼は米国に移住してからアーティストとして生まれ変わった気がすると言う。